バロック音楽、ロマン主義、そして現代音楽へ – 有名ピアノ作曲家を時代別にご紹介
バロック音楽から現代音楽の時代に至るまで——。ピアノの歴史を振り返り、それぞれの時代を代表する作曲家について学びましょう。
最終更新日:2025年4月2日
バロック音楽、古典派・ロマン派音楽、現代音楽におけるピアノ
英語で「Classical」と呼ばれる古典派の時代は、1800年代初めに終わりを告げたかもしれませんが、「クラシック音楽」と呼ばれるジャンルはそのはるか昔から存在していました。また、現在作曲されている音楽にも、いまだにこのジャンルに属するものがあります。この記事ではピアノ音楽の歴史を振り返り、それぞれの時代の有名作曲家をご紹介していきます。さらに、音楽のスタイルの変化が楽器としてのピアノの進化と同時に起きるケースが多かったことについても見ていきましょう。
この振り返りを始める前に、いくつかご留意いただきたいことがあります。
- 年数に関する情報は厳密なものではありません。「バロック音楽は終わった。今は古典派の時代だ」と宣言する人がいたわけではないのです。好みやスタイルは徐々に変化を遂げるため、時代は重複しています。
- ここに挙げる作曲家は、西洋のクラシック音楽に限定されたものです。flowkeyはピアノに焦点を当てているから、というのがその理由です。ピアノは、こちらの記事で扱う時代の流れの終わり近くになるまで、他の地域にはあまりもたらされませんでした。
- これは全てを網羅したリストではありません。ここでの目標は、極めて重要な作曲家らを例にとり、各時代の違いを説明することです。
それでは、各時代の雰囲気や主要な作曲家について見てみましょう。おすすめの曲をさらに知りたい場合は、flowkeyの「音楽をする人なら誰もが知っておくべき、クラシックピアノの定番曲14選」の記事をチェックしてみてください。
バロック(1600~1750年)
この時代までは、オルガンがピアノに最も近い楽器でした。1500年代になるとハープシコードが発明され、それが発達してバロックのピアノ音楽の特徴となります。現代のピアノは、ハンマーが弦をたたくことで音が出ますが、ハープシコードの弦は爪弾く仕組みです。そのため全ての音は同じ音量で鳴り、音は持続しませんでした。
この明瞭でくっきりとした音が、バロック音楽に影響を与えたのです。この時代は、独立しながらもハーモニーを形成する複数のパートを両手で演奏し(複合的な調的対位法と呼ばれるテクニック)、継続的なベースライン(通奏低音)に重ねるのが特徴でした。曲は多くの場合、主題で始まってそれを変奏させていく形式です。感情に訴えかけるこの構造は、古典派・ロマン派の作曲家らにより、さらに高められていきます。
バッハ(1685~1750年)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(バッハの家系には他にも約50人の音楽家・作曲家がいたので間違わないように!)は、バロック音楽の巨匠でした。彼の「ゴルトベルク変奏曲」は、バロック音楽の主題と変奏の典型例で、バッハの対位法の活用を示す美しいアリアが有名です。
ヘンデル(1685~1759年)
ヘンデルの音楽も、対位法と、バロック音楽の時代の特徴である華やかな装飾性を用いています。ただユニークなのは、彼の作品が祖国ドイツとイングランドの影響を組み合わせていること。ヘンデルは、そのドラマチックなスタイルを称賛されることが多々あります。彼の豪華絢爛(けんらん)な作品が当時の宮廷で演奏されている場面も、想像に難くありません。
ヴィヴァルディ(1678~1741年)
短い間司祭も務めていたヴィヴァルディの音楽には、バロック音楽の宗教的要素が実際に見て取れます。ヴィヴァルディの「四季」は、バロック時代の終わり頃に作曲されたため、よりバランスの取れた構造や、主題の展開に重きが置かれていることなど、古典派の要素が紛れ込むようになっているのが感じられます。
古典派(1750~1820年)
英語では「Classical」と呼ばれますが、この記事の冒頭に書かれている古典派の時代のことです。より一般的なクラシック音楽のジャンルと混同しないようにしましょう。この時代は、フォルテピアノがハープシコードに取って代わり、その後まもなく主要な鍵盤楽器となりました。
この進化により、演奏者は音をさらに自由に調整できるようになります。音の強弱を変化させたり、必要であれば音の響きを持続させたりできるようになったのです。表現の可能性が大きく開き、その結果スタイルも進化しました。
古典派音楽は、バロック音楽と比べてより軽い質感で、より明瞭なメロディーラインをコードの上に重ねる方向へと全体的にシフトしています。この時代は、真面目さよりも優雅さが重視されたのです。
モーツァルト(1756~1791年)
モーツァルトは35年という短い人生の間に、神童から、音楽史上極めて影響力のある作曲家へと成長しました。flowkeyでは、彼の最初の曲から死後発表された最後の傑作までを集め、モーツァルトの名作を詳しく紹介した記事を掲載しています。中でも、モーツァルトのスタイルと古典派音楽全体を見事に捉えた作品を挙げるとすれば「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」です。
ハイドン(1732~1809年)
ハイドンは、友人であったモーツァルトと、生徒であったベートーヴェンの両方を感化させた重要な存在でした。彼は古典派時代、いくつかの音楽形式に大きな影響を与えています。中でも注目すべきはソナタ、交響曲、弦楽四重奏です。ハイドンには、「交響曲の父」や「弦楽四重奏の父」といったニックネームさえあります。
ハイドンの機知や創意工夫により、彼の音楽には表情豊かな個性が吹き込まれました。古典派時代を方向づけるだけでなく、その後のロマン派時代の礎となる趣です。
ベートーヴェン(1770~1827年)
非常に多作で革新的だったベートーヴェン。その音楽は、よく3つの時期に分割されます。初期はモーツァルトやハイドンの「ウィーン風」スタイルを習得しつつ、作品にはより多くの表現や音階を活用しました。
中期になると、ベートーヴェンは古典派音楽をロマン派の時代へと推進する最前線に立ち、厳格な古典派の構造から、より表現的なものへと移行していきます。1801年に発表され、次の時代の幕開けを示したピアノソナタ「月光」が絶好の例です。
ロマン派(1800~1900年代初期)
産業革命により、みなさんもご存知の現代のピアノが誕生しました。鍵盤の数は88に増え、音が強くしっかり維持されるようになったことで、表現や感情にあふれたロマン派音楽が出現します。バロック音楽と古典派の時代は、決められた構造を持つ特定の音楽形式に重点が置かれていましたが、ロマン派音楽でより大事にされたのは感情の伝達でした。
さらなる自由が与えられたことで、夜想曲や幻想曲、前奏曲など、不協和音や前進的な質感を恐れず活用した新しいタイプの曲が生まれます。また移動の機会が増えたことで、作曲家らはもはや、宮廷や名門の音楽学校にしばられなくなりました。世界各地からの様々な影響がもたらされるようになり、作曲家は音楽を利用して、自国や海外の国の光景を描くようになります。
シューベルト(1797~1828年)
ベートーヴェンと同様、シューベルトは古典派とロマン派の両時代にまたがっています。例えば、わずか22歳で作曲した「The Trout(ます)」などの作品には、古典派の形式と構造的な明確さが見られます。
一方、死去前の数ヶ月間に作曲されたこちらのソナタはまさにロマン派。感情を豊かに表現したスタイルへと変化しています。
ショパン(1810~1849年)
ショパンは、ピアノ・作曲の巨匠でしたが、それだけではありません。彼はおそらく、音楽界における初期のセレブの一人と言えるでしょう。ショパンの恋沙汰は高い注目を集め、彼自身も謎の人物でありました。ショパンが人前で演奏したのは、生涯でも30回ほどです。
別記事として、flowkeyお気に入りのショパン作品(英語版のみ)をまとめたページもご用意しています。中でも下のノクターン(夜想曲)は、ピアノの表現の可能性を広げるショパンの才能を美しく示しています。
ブラームス(1833~1897年)
ブラームスは、伝統と革新の間の見事なバランスを取り、古典派時代の音楽の緻密(ちみつ)なスタイルをロマン派の深い感情と融合させました。彼は他のロマン派作曲家の豪華なスタイルを拒絶し、音楽以外の物語に頼らずとも、音楽はそれ自体で成立できるものと強く信じていたのです。
その結果生まれたのが、抽象的ながらも感情的に豊かで、多くの人に「純粋な音楽」と呼ばれた作品です。
チャイコフスキー(1840~1893年)
華やかなロマン派作曲家と言えば、チャイコフスキーがこの時代の壮大さを如実に示す好例です。チャイコフスキーの音楽は壮大で神秘的、また祖国ロシアへの愛国主義的な視点があり、当時のロシアや西洋の音楽の固定観念を超えるものでした。
激しい感情をたたえ、物語を中心として進められる特徴的なメロディーの「白鳥の湖」は、チャイコフスキーの傑作です。
20世紀と現代音楽(1900年初め~2000年)
この時期になると、ピアノが他のジャンルにも登場し始めます。ブルースやジャズ、ミュージカルから始まり、ロックやポップス、電子音楽の種をまきました。クラシックピアノ音楽にはまだ重要性がありましたが、録音音楽や世界中の音楽ジャンルの台頭に直面し、作曲家は新たな分野へと乗り出していきます。ガーシュウィンを始めとする一部の作曲家は、ポップスとクラシックの両方を作曲することさえありました。
こうした状況を背景に、20世紀初めは印象主義から後期ロマン派、表現主義までサブジャンルが乱立します。さらに第二次世界大戦後になると、新ロマン主義や実験主義、ミニマリズムといったスタイルも登場しました。細かい情報を自分で調べてみることもできますが、今の時点ではこの時代、ピアノ音楽がさまざまな形に発展したことを理解するだけで十分です。
ドビュッシー(1862~1918年)
ドビュッシーは、ロマン主義の自由と表現をさらに発展させました。こうして生み出したものを、彼は「交響的スケッチ」と呼んでいます。印象主義的作曲家の第一人者と広く考えられているドビュッシーですが、本人はその呼び名を嫌っていました。奇妙でありながら感情を喚起させる「月の光」を聴けば、ドビュッシーがどのようにして独自のハーモニーのスタイルや音楽の色彩を作り上げたのかが聞こえてきます。
サティ(1866~1925年)
ロマン主義の終わりにはさまざまな実験が行われました。そしてサティは、間違いなく発明家と言えます。最も良い意味でエキセントリックだったサティ。自身については音楽家ではなく、「音測定学者」(音を測る人)と呼ぶことを好み、彼の最も愛される作品のタイトルとして「ジムノペディ」という言葉を生み出しました。
プロコフィエフ(1891~1953年)
プロコフィエフは人生の大半を米国や欧州で過ごしましたが、他の多くのロシア人作曲家と同様、音楽に祖国の要素を多く盛り込んでいます。彼の作品「Historiette(物語)」を聴けば、こうした複数の影響が混ざり合う様子や、プロコフィエフが感情を呼び起こすため、どのように不協和音や不調和を活用したかが聞こえてきます。
これで終わり、ではありません。クラシックピアノ音楽は今も生きています。『ハリー・ポッター』の神秘的な「ヘドウィグのテーマ」や『ゲーム・オブ・スローンズ』の壮大なメインテーマなど、クラシックピアノ音楽は、映画やテレビの音楽で感情を伝える要です。
また、「テトリス」や「スーパーマリオ」、「ゼルダの伝説」やその他様々なビデオゲームでも、音楽を聴くことで先に進む意欲が湧きます。現代のクラシック音楽についてもっと見てみたいという方にはまず、ピアノで演奏するビデオゲーム音楽(英語のみ)についての記事をおすすめします!
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